純文学との出会い ~ノルウェイの森~
記念すべき(?)最初の書評は、絶対これって決めていました。どこでも紹介しています。「なんかいい本ありません?」って聞いてきた後輩にも紹介しました。
「ノルウェイの森 / 村上春樹」
ノーベル賞の時期になると必ず話題になる彼の本です。(私自身がハルキストというわけではないです笑)
読んだことがない方もいると思うので、少しだけあらすじを。
主人公の「僕」(ワタナベ)は飛行機の中で、自分がかつて大学生だった頃のことを回想する。
二十歳を目前にした彼には自殺した親友(キヅキ)の元恋人、「ナオコ」という大切な女性がいた。彼女は精神的な病気に悩まされていた。
ナオコの病気が悪化し、会えない日々が続く中、彼は大学で「ミドリ」という女性に出会う。ナオコとミドリ、二人の対照的な女性に翻弄されながら、「僕」は生と死について深く考えるようになっていく。
……という感じでしょうか?(後述しますが、この本のあらすじはとても書きにくい!)
読書そのものは幼少期からの趣味でしたが、純文学を読んだのはこの本が初めてでした。
高校一年生の頃、某古本屋でハードカバー上下二百円という価格で売られていたこの本。赤と緑の表紙がなんとなく気になり、値段も安かったため購入を決断。
その頃は「村上春樹って有名な小説家だっけ~。よく知らないけど、有名ってことは面白いだろう」という気持ちでした。
が、当時全く純文学というものを真面目に読んだことがなく、ミステリー小説ばかり読んでいた私は衝撃を受けました。
起承転結が全く分からん!(これがあらすじの書けない原因でした)
突然始まる性描写!(そこに意味はあるのか!?)
脈絡もなく理由も語られない登場人物たちの行動!(ミステリーでは全てに理由があるのに!)
とにかく読みながら全く意味が分からなかった。本当にわけが分からないんです。
今まで自分が読んできたものが、いかに私たちを楽しませるための工夫が凝らされていたか……それに初めて気が付きました。
しかし、私は読むのをやめませんでした。
なぜでしょうか、こんなに意味不明なのに、ページをめくる手が止まらないのです。
この奇妙な陶酔感を時折無性に味わいたくて、私はこの本を何度も読み返しました。そして五周目くらいになって、ようやく私は気付いたのです。
会話文だけでなく、地の分ですら生き生きとした感情を伝えてくる。
登場人物の真意は語られないのに、なぜか痛みや、悲しみや、愛情や絶望がひしひしと感じられる。
私は小説の持つ力に戦慄しました。
「悲しい」と言わなくても悲しさが伝わり、「寂しい」と言わなくても寂しさが伝わる。
しかもその感情は、私たちが現実世界で感じるものと同じくらいの壮絶さで読者を殴りつけるのです。
あ、純文学って芸術なんだ。と私は放心しました。
ただの娯楽じゃなく、感情を揺さぶり、打撃を与えるものとしての小説。それが純文学なのだと。
もちろんこれは私の主観的な感想で、そもそも「村上春樹は純文学作家か?」という疑問はあるそうなのですが。
それでもこの本を読んで以来、私の読書に対する姿勢が変わったことは紛れもない事実です。
今まで手に取ろうともしなかった小説、漠然と勉強のために使っていた国語の教科書、果てはセンター試験の小説問題まで。
つまらなかった本が一気にキラキラして見える。
大げさに言うと人生が楽しくなりました。
あとノルウェイの森は緑と赤の装丁がとても素敵なんです。私が何度もこの本を読むのは、装丁が気に入ったからというのもあるかもしれません笑
純文学の入門書は人それぞれだと思います。
「ノルウェイの森」は、今まで気付かなかった純文の魅力を私に教えてくれましたが、皆さんにとっての純文学入門書はどの本でしょう。